静岡県知事の交代によりリニア中央新幹線開業に向けて“出発進行”
4月末に配信した当ブログでは、静岡県の川勝平太知事が失言したことの責任を取って辞職した一件について触れました。川勝知事は4月1日に行われた静岡県庁の入庁式で新規採用職員を前に、「実は県庁というのは別の言葉でいうとシンクタンク。毎日、毎日、野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノを作ったりとかということと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方たち。ですから、それを磨く必要がある」と“訓示”。この発言が職業差別にあたるとして批判が殺到したのを受けて、翌2日に辞意を表明したのでした。川勝知事はリニア中央新幹線の建設工事に対して反対の立場を取っており、山梨県の長崎幸太郎知事とたびたび激しいバトルを繰り広げてきたことで知られます。川勝知事いわく「山梨で掘削工事をすると、静岡の水が山梨に流出してしまう」というのが対立の理由です。ところが川勝知事が辞職したことにより、リニア中央新幹線の建設計画は文字どおり“出発進行”となりました。川勝知事というリニア中央新幹線にかかっていた“ブレーキ”が辞職により解除されたからにほかなりません。静岡県は6月18日、県境近くでも山梨県内でのリニア中央新幹線の掘削工事について条件付きで容認すると発表しました。川勝前知事による従来の主張を覆し、JR東海、山梨県との間で同日合意したのです。JR東海が5月に山梨県側から再開したボーリング(掘削)調査についても静岡県は同意しており、今後は静岡県内での掘削調査への対応が焦点となります。合意の前提として静岡県が、山梨県内の工事で山梨側に流出した水について「静岡の水」という所有権の主張や返還を求めないと明記しました。また山梨県内での掘削調査やその後の掘削工事などで流出する水量をJR東海と静岡県が協力して推定。さらに大井川水系への「健全な水循環の回復措置」について協議しながら求めていく方針だといいます。一方、山梨県の長崎知事は今回の合意について「調査のみでなく、先進坑や本線トンネルの本坑も含めた工事の進展が図られ、静岡県の懸念にも応えられる」と前向きに受け止めました。

三者合意の内容は山梨県の主張が概ね認められた形に
6月18日に山梨県庁で開かれた定例記者会見で、長崎知事はリニア中央新幹線南アルプストンネルの県内工事における三者合意について以下のように述べました。
長崎知事 昨年7月から協議を進めてまいりました南アルプストンネルの県内工事におきます山梨県、静岡県、JR東海の三者での合意事項がまとまりましたので発表させていただきます。リニア中央新幹線建設に係ります山梨県内の南アルプストンネル工事ですが、これまで静岡県から、県境付近の掘削について静岡県内の水が流出するという懸念が示されていたところはご案内のとおりであります。本県といたしましても、南アルプストンネルのトンネル工事の1日も早い完了に向け、貢献をしていきたいということから、新たに流動した水の回復措置及び措置が取られる時期について、山梨県主導のもと、協議を重ねてまいりました。合意の前提といたしましては、静岡県は山梨県側へ流出した水に対し、「静岡の水」という所有権を主張し、流出した水の返還を求めるものではないこととする。その上で、ボーリング調査、先進坑・本坑それぞれの掘削工事を進め、並行して、工事を要因として新たに流動する可能性がある水量をJR東海と静岡県が協力して推定作業を進めます。この推定された水量によりまして、健全な水循環が損なわれる場合、静岡県とJR東海で調整をし、回復措置を図るということとなります。これによりまして先進坑・本坑を含め、県内の南アルプストンネル工事が着実に進むとともに、静岡県の懸念にも応えられるものとなったところであります。今後も、一日も早いリニア中央新幹線の開業に向けまして、本県として果たすべき役割をしっかりと果たしてまいりたいと思います。
以下、記者と長崎知事の一問一答です。
記者 リニア中央新幹線南アルプストンネル県内工事における三者合意についてお伺いいたします。長崎知事は、これまで県境付近での工事に関して、それは地方公共団体の長である長崎知事の裁量権であり許可権であるので、静岡県側がこれに関して何か言ってくることについてはお控えいただきたいということを繰り返し主張されてきました。今回こういった合意に至った経緯と意義についてお伺いいたします。
長崎知事 まず意義に関しましては、ボーリング調査によって静岡の水が山梨県側に流れてくるのではないか、このようなご懸念のもとに静岡県が直接JR東海に対して、山梨県内のボーリング調査に何がしか物を申されてきました。これに対して、山梨県内での民間事業体の活動については、山梨県が責任を持って対処しますので、山梨県の頭越しに静岡県がその事業者に対して何がしか言うのは遠慮願いたいと。ただし、その事業者の活動の結果、静岡県に何がしかのご迷惑がかかるような状況であれば、これは山梨県が責任を持って対処します、ということをずっと申し上げてきたわけです。今回の合意は、基本的にJR東海と静岡県の間で水の問題の調査をし、回復措置を講ずるための議論をしていきますが、我々がしっかり裏書をすることで、JR東海に対しては、万が一、静岡県に何がしかの環境上のご迷惑がかかるような事態となった場合には、私どもとしてもJR東海に対してしっかり物申すべき立場でもありますし、また静岡県に対しては我々がJRに対して何かを言う責務があるという位置付けになろうかと思っています。他方で、悪影響を及ぼさない限りにおいては、JR東海に対して静岡県は今回のルールのもとに受け入れるということになるわけですので、そういう意味で、これまで我々が言っていたことを山梨県と静岡県とJR東海の三者の合意という形で1つの形を作ったということに意味があろうかと思っています。経緯については、もともとそういう出来事がありましたので、ここはしっかり我々のスタンスと静岡県の懸念事項とをしっかり整理をして、お互い合意ができる形を作ろうではないかということで、私どもからJR東海、そして静岡県に話をして協議を重ね、ご理解をいただいたという形になっています。

リニア中央新幹線開業による山梨の大きな発展に期待
記者と長崎知事の一問一答は続きます。
記者 昨年7月から協議を続けてこられたというお話でしたけれども、今回協議がまとまったことについては、静岡県知事選の影響があったというふうにお考えですか? 知事が交代したことによって協議がまとまったというふうにお考えになるのかどうかです。
長崎知事 協議自体は川勝知事のもとでも粛々と進めておりましたので、そこはもちろん新しい鈴木(康友)知事になられてこの議論が加速したという側面はあろうかと思いますが、ただ、協議自体はずっとこれまでも川勝知事のもとでもしっかりと真摯に進めてきたということであろうかと思います。
記者 昨年5月に静岡県がJR東海に対して、私たちの合意なく山梨県境での工事はやめてほしいという要請をされていますけれども、今回の合意によってこの要請の取り扱いはどういうふうになるとお考えでしょうか?
長崎知事 この協定に基づいて、その要請なるものは意味をなさなくなったと私は考えるべきだと思います。
記者 鈴木知事になられてから協議が加速したというような受け止めをされたというようなことをおっしゃられていたと思うんですけれども、このスピード感を改めてどう感じてらっしゃるのかと。あとこの後に、静岡県の後ではあると思うんですけれども、山梨工区の視察にも鈴木知事は前向きなお考えを示されています。ボーリング調査自体、県境まであと339㍍まで迫っている中で、どういったところを見ていただきたいとか、視察に対してどのように臨んでいただきたいか、お考えがあればお願いします。
長崎知事 静岡県の鈴木知事ご本人がスピード感を持って対応していくと、公の場でもおっしゃっている話ですので、まさにそれを実行していただいているんだなという印象を持っております。もう1つ、山梨工区のボーリング調査ですけれども、静岡県の皆さんがご心配されるほど多くの水が出ていないと、この現実を知事ご本人の目で見ていただきたいと思います。その上で、現実に基づいたさまざまな議論を一緒になって進めていきたいと思います。
リニア中央新幹線開業は山梨県の関係者にとって長年の悲願です。JR東海は今年3月、品川―名古屋間の2027年開業を断念しましたが、今回の静岡県の合意により開業に向けて一歩前進したことは間違いありません。リニア中央新幹線が開業すれば、品川―名古屋間を最速40分、最終的には品川―大阪間を1時間強で結ぶことになります。山梨と東京はわずか25分で結ばれるのです。同新幹線が開業すれば、山梨はもはや千葉や埼玉、神奈川と同じように東京のベッドタウンといっても過言ではありません。いうまでもなく名阪から山梨を訪れる人たちも格段に増えます。リニア中央新幹線開業が観光振興に向けた大きな起爆剤となるのは間違いありません。当然ながら石和温泉をはじめとする本県の温泉地にも観光客が押し寄せ、ひいては宴会コンパニオンのニーズがこれまで以上に高まることでしょう。リニア中央新幹線の開業が今から楽しみでなりません。

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